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イベントレポート:六古窯日本遺産プロジェクト 企画展2018「旅する、千年、六古窯 火と人、土と人、水と人が 出会った風景」 〜 丹波 第1部 ガイドツアー後編「内田鋼一展」〜

2020.03.25

【企画概要】
「旅する、千年、六古窯 火と人、土と人、水と人が出会った風景」関連イベント
日時:2019年1月12日(土)

第1部 ガイドツアー 13:00 – 15:00
会場:1 立杭 陶の郷 丹波立杭焼伝統産業会館
   2 兵庫陶芸美術館
案内役:高橋孝治(六古窯日本遺産活用協議会 クリエイティブ・ディレクター)、マルテル坂本牧子(兵庫陶芸美術館 学芸員)

第2部 トーク「丹波」 15:30 – 17:00
会場:archipelago(http://archipelago.me/)
出演者:今西公彦、内田鋼一
進行:高橋孝治



2019年新春、本展は六古窯のひとつである丹波焼の中心的な産地、篠山市立杭(現・丹波篠山市立杭)へ巡回しました。1月12日には関連イベントとして、本展と兵庫陶芸美術館の企画展「内田鋼一展 -時代をデザインする-」をあわせて観賞するガイドツアー、さらに本展出品作家の今西公彦さんと陶芸家・内田鋼一さんによるトークを開催。
会場に集まった出展作家や地元・篠山市の方々によりさまざまな意見が交わされ、いまだ多くの謎に包まれた丹波焼を紐解きながら、私たちの生活とやきものの関係を再考する一日になりました。

前回に引き続き、第1部の様子をレポートします。

陶の郷から兵庫陶芸美術館への道のりは徒歩10分。左手には、谷底を流れる四斗谷川の対岸の切り立った山並みが見える。この深い山里の歴史を平安時代まで遡ると、丹波焼のルーツとなるやきものに辿り着くのだそうだ。以来、窯の形を変え、釉薬を変え、数多の陶工の手によって脈々と受け継がれてきた地域産業が、いつしか丹波焼と呼ばれるようになっていった。

その調査研究と振興をめざすのが兵庫陶芸美術館だ。丹波焼をはじめとする兵庫県内産の古陶磁から、国内外の現代陶芸までを広く扱い、次世代に陶芸文化をつなぐための人材養成にも力を入れている。

内田さんの作品世界を丁寧に解説してくれた坂本さん

美術館のガイドを引き受けてくださったのは、本展と同時期に開催された『内田鋼一展』のキュレーターである学芸員・マルテル坂本牧子さん。実は、今回坂本さんのガイドツアーが叶ったのは偶然の引合せだった。内田鋼一さんの個展と、この日、内田さんが登壇する第2部のトークイベントの開催は、全く別なところに端を発し、偶然にも時期が重なった。「丹波焼をめぐる不思議な巡り合わせ。これもご縁」と、坂本さん。

直径1メートルもの巨大な壺に鑑賞者の視線が集まる

時代をデザインする 内田鋼一のクリエイション

『内田鋼一展』は3つのパートで構成される。最初に鑑賞するのは「時代をデザインする 内田鋼一のクリエイション」と題された、白い作品ばかりが並ぶ展示室。入り口付近には巨大なオブジェのような壺が置かれ、周囲には彼の代表的な作品〈Bowl〉など、繊細さと大胆さがせめぎ合うような器の数々が並ぶ。

参加者たちがひと通り揃ったことを確認し、坂本さんのギャラリートークがはじまった。
「内田鋼一は、非常にユニークな作家です。実用的な器から立体作品まで幅広く手掛け、近年では建築空間とのコラボレーション制作や、萬古焼の私設ミュージアムの運営など、これからの陶芸のあり方を示唆するような活動も見られます。
彼のルーツは愛知県瀬戸にありますが、その後各国を旅して、世界中の伝統工芸・近代工業の窯業地で作陶を経験しました。他に類を見ないほど卓越した作陶技術は、この経験で培われたものではないでしょうか。」
なるほど、白い器ばかりが集められたからこそ、その技術と表現の多彩さがよくわかる。

内田さんの作品。さまざまな手法を用いた白い茶碗や急須が並んだ

形の素 内田鋼一のコレクション

2つ目のパートは「形の素 内田鋼一のコレクション」。その名の通り、内田さん自身の作品ではなく、彼が蒐集した古美術品が並んだ。
紀元前2〜3世紀のエトルリアのテラコッタ像から、古代エジプトの石製容器、大正時代の日本製のガラスコップまで、一見脈絡がないかのようにも見える蒐集品には、内田さん曰く「自身の作品にはない“品”がある」という。作家の視線を疑似体験するかのような展示空間だ。

なかでも、今回注目を集めたのが「白丹波」の展示台。白丹波とは、江戸時代に丹波立杭地域でつくられた白い化粧土の掛かったやきもので、歴史的な背景や工法の詳細が未だ定かではない。
丹波古陶館で出合って以来、白丹波の蒐集を続けているという内田さん。なぜ白丹波に特別な興味関心を抱いているのか。その理由は、第2部のトークショーで伺いたい。

13点もの白丹波が出展された

萬古アーカイブデザインミュージアム 内田鋼一のキュレーション

続く3つ目は、自らが運営する美術館のコンセプトと活動を紹介するパートで、「萬古アーカイブデザインミュージアム 内田鋼一のキュレーション」と題された。

近隣に美濃や瀬戸、常滑などの大規模な産地があり、やきものに適した土の採取が困難な地域特性をもつ萬古には、技術開発やデザイン性、海外流通経路の開拓など、ほかの窯業地とは一線を画す独自性があるという。
内田さんは、特に明治~昭和の産業から生まれた萬古焼の「どこかキッチュな魅力」に着目し、美術館の活動を通じて発信している。

まるで琺瑯製のような陶製洗面器

展示室には近代以降の萬古焼の洗面器や鎖、メモ台、鏡餅などが並んだほか、国内外の陶製アイロンや、陶製の卵の置物、琺瑯製のねじなどもあわせて展示された。
たとえば、琺瑯の洗面器に似せてつくられた萬古焼の洗面器は、鉄不足の戦時下で生産されたものだったりと、いずれも当時は必要があって生まれた日用品ばかりだが、道具として使われなくなった現代では、造形的な面白さが際立つ。

坂本さんのギャラリートークでは、その現代的な魅力の陰に、大量生産による産業の問題を示唆する内田さんの視点があるとも語られた。
私たちにとってやきものとは道具なのか芸術なのか。なぜ白丹波が人を惹きつけるのか。ふつふつと湧き出した問いを抱えながら、第2部の会場へと足を進めることとなった。

壁にかけられた世界各国のワインオープナー


※第2部 トーク「丹波」レポート前編へとつづく

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