セミナーでは、トランクデザイン株式会社の堀内康広氏、ミテモ株式会社の澤田哲也氏の2名によるアウトバウンド・インバウンドについての講演ののち、参加者同士の意見交換を行いました。
<講演内容>
トランクデザイン株式会社 堀内康広氏
・講師紹介
世界35カ国に展開するマッチ型のお香「hibi」を筆頭に、工芸の価値を国内外へ届けている堀内氏の講演では、「日本のモノづくりを未来に残す。」というビジョンのもと、それを実現するための仕組みや様々なプロジェクト、また日本の工芸を商品としてさらに磨き上げ世界に売り出すというアウトバウンドの活動をご紹介いただきました。
主な講演内容
・トランクデザイン株式会社の取り組み(作り手と使い手を繋げる)
・「日本のモノづくりを未来に残す」ための仕組み
・アウトバウンドの取り組み
堀内氏が広告制作から地場産業の支援にシフトしていくきっかけとなったマッチ製造会社の支援の話や、兵庫の地場・伝統産業から新たなライフスタイルを生み出していくローカルクラフトプロジェクト「Hyogo Craft」の紹介、六古窯の産地でもある丹波・瀬戸との取り組みを例に挙げながら、使い手が作り手の元を直接訪れる「作り手と使い手の繋げ方」や「産地の技術継承」について、お話しいただきました。
また、海外展示会への出展といった工芸を世界に売るためのマーケティング活動についてもお話しいただき、アウトバウンドするために具体的にどのような取り組みをしているのかを共有いただきました。
Hyogo Craft 兵庫に根付く地場産業たち
様々な地域や産業と関わる中で大切にしているのは、リサーチを丁寧にすること。その上でどうすればニーズに合わせた見せ方ができるか、お客様に購入いただけるものになるかというデザインの視点で地場産業に関わっているというお話がありました。
産地の事業者がデザイナー等と連携するうえでも重要なポイントになると感じました。
ミテモ株式会社 澤田哲也氏
・講師紹介
「産地観光を起点に新たな循環を生み出し、日本の地域のクラフトを未来へと手渡す」ことをスローガンに掲げるクラフトツーリズム事業LOCAL CRAFT JAPANの共同発起人。
澤田氏の講演では、「工芸をテーマとするインバウンド旅行の受け入れ」について、旅行業界のマクロ的な動向や、工芸に出会える旅「LOCAL CRAFT JAPAN(以下 LCJ)」の事例をご紹介いただきました。
主な講演内容
・高付加価値旅行者市場の動向
・工芸に出会える旅「LCJ」の取り組み及び事例
・コンテンツを考える上で大切にしたいこと
講演の前半では「高付加価値旅行者が旅行体験に何を求めているのか」ニーズの分類に触れながら「『伝統的である』ということは顧客にとって価値なのか?」という問いかけと共に、価値設計のポイントについてヒントをいただきました。
また、LCJのコンテンツの一つである奈良吉野の事例を挙げ、富裕旅行者層について、必ずしも全ての項目で高額消費を行うわけではなく、優先度の高い事項に重点的に投資をする層がいることに触れ、SIT(Special Interest Tour)と称される、特定の目的に特化しておこなわれる趣味性の高いプログラムのニーズにどのように応えているのか、具体的な取り組みをご紹介いただきました。
富裕旅行者には、上表のようなそれぞれの価値観があり、来てほしい層に合わせたコンテンツの準備と広報が必要ということが分かりました。
本セミナーの終盤では、共創ネットワーク構築に向けたディスカッションの時間として、参加者同士の意見交換をする場も設けられました。11月8日に実施したキックオフイベント(実施レポート)での永田氏からの提言、問いかけを振り返りながら「自分が所属している産地として、あるいは産地を超えたつながりの中で、未来に向けてどのような取り組みができるか?」といったテーマについて話し合いました。
参加者の方からは「やきものが生まれる背景(自然との関わりや作り手の想い)を発信していきたい」「六古窯をつなげるツアーが実施できないか」「限りある土や釉薬の資源を活用できるよう、他の産地と意見交換をしたい」といったご意見があがり、やきもの事業者の皆さま同士で想いやアイデアを共有する有意義なセミナーとなりました。